生活習慣病
生活習慣病とは
不摂生な生活習慣を長期にわたって続け、それが引き金となって発症する病気の総称を生活習慣病と言います。
この不摂生とは、不規則で過食・偏食といった食習慣、運動不足、喫煙や多量の飲酒などのことで、ストレスなどの環境要因も複雑に絡み合うなどして発症すると考えられています。
代表的な生活習慣病
これら生活習慣病は、いずれも初期段階では自覚症状が出にくいことから、病状を進行させがちなので注意が必要です。それだけに多くの方が発症に気づくことが遅れます。その間も血管内皮は損傷を受け続けていますので、気づいた時には生活習慣病が起因となって発症する合併症(心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症 など)が起きていたということも少なくありません。このような状態にならないためには、定期的に健康診断を受けることはとても重要です。
高血圧とは
血圧の数値が慢性的に高い状態にあると高血圧と診断されます。
そもそも血圧とは、心臓から血液が送られる際に血管壁にかかる圧力のことですが、常時高血圧となってしまうと負荷をかけて血液を送らなければならず、血管壁はその圧に耐えようと硬直するようになります。
そして血管のしなやかさは失われ、やがて動脈硬化を招くようになって、さらに放置すると心筋梗塞、心不全、脳梗塞などの合併症を引き起こすようになります。
なお、高血圧の診断は血圧測定になります。
日本高血圧学会によると、高血圧の診断基準として、外来時測定で収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上としています。ただし1度の測定で基準を上回っただけでは診断が付きません。同じような条件で複数回行い、それでも基準を上回っていることが確認されたら「高血圧」と診断されます。
高血圧の症状について
常に血圧が高いことで起きる自覚症状というのは、ほぼありません。しかし人によっては稀に頭痛、肩こり、倦怠感、めまいなどがみられることがあります。ただし多くの場合、健康診断などで行う血圧測定によって、医師に指摘されて気づくといった方がほとんどです。血圧の高さを指摘されたら、早めに専門の医療機関を受診ください。
高血圧の治療について
高血圧の治療の一番の目的は、心筋梗塞や脳梗塞といった合併症を防ぐことで、そのためには血圧をしっかりコントロールすることが大切です。
具体的には、生活習慣の改善(食事療法、運動療法)が基本になります。
食事療法では、減塩療法(1日6ｇ未満)、栄養バランスの摂れた食生活、目標とする適正カロリーの摂取を心がけるといったことを行います。また運動療法については、きつい運動をすると逆に血圧を上昇させかねないので、息が弾む程度の有酸素運動を行います。
内容としては、ウォーキング、軽いジョギング、サイクリングなどで充分ですが、できる限り毎日行うようにしてください。そのほか、標準体重の維持、睡眠や休養を充分にとる、禁煙・節酒なども実践します。
上記の改善方法だけでは血圧のコントロールが困難であれば、医師の判断によってこれらに併せて降圧薬を用いた薬物療法も行われます。
糖尿病とは
一言で言うと、血糖値が慢性的に高い状態です。血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、その数値が常に高く維持されているということです。通常であれば、食事や甘いジュースなどを摂取することで上がる血糖値は、膵臓でつくられるホルモンの一種であるインスリンが分泌されることで、上がった数値は戻るようになる(バランスがとれた状態)のですが、何らかの原因によって、このインスリンが出ない、もしくは分泌が足りない状態になると、常に血糖値は高いままになってしまいます。
血糖値が高い状態(血液中に糖がダブつく)というのは、糖をエネルギー源として筋肉や脂肪などに取り込めなくなっていることでもあるので、筋肉や脂肪自体をエネルギーとして活用せざるを得なくなって、食べても体重が減少する、身体が疲れやすいといったことがみられるようになります。そのほかにも、のどが異常に渇く、尿量が多いなどの症状があれば糖尿病が疑われます。
また、症状が出なかったとしてもこれといった治療をしなければ血管内皮は常にダメージを受けた状態になっているので、血管自体は硬直していき、やがて動脈硬化を起こすようになります。それでも放置が続けば、やがて細小血管や神経が障害を受け始め、合併症(糖尿病三大合併症の糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害 など)を引き起こすようになります。
糖尿病の検査について
糖尿病が疑われる場合、診断をつけるための血液検査を行います。。
その判定基準は次の通りです
- 1.早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上、もしくは75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上、あるいは随時血糖値が200mg/dL以上
- 2.HbA1c値が6.5％以上
上記の1と2の両方を満たすと糖尿病と診断。なお、1か2どちらかが当てはまる場合は「糖尿病型」と診断され、再検査で同様の結果であれば、糖尿病と診断されます。
糖尿病の治療について
糖尿病治療の目的は合併症を予防することです。運動療法では、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を無理のない程度に行います。
上記の改善方法のみでは血糖のコントロールが難しいという場合は、それらに併せて薬物療法となります。主に血糖を下げる効果があるとされる経口血糖降下薬を服用していきます。それでも効果がない場合は、体外からインスリンを摂取していくインスリン注射を行います。
脂質異常症とは
脂質異常症とは、その名の通り脂質の数値が異常な状態を言うのですが、血液中には色々な脂質が含まれていて、その中の(LDL：悪玉)コレステロールとトリグリセライドは動脈硬化との関係が深く、これらの数値が異常に高い場合、高脂血症と診断されていました。
その後、HDL(善玉)コレステロールの数値が異常に低い場合も動脈硬化のリスクが高いことが判明し、現在の疾患名「脂質異常症」と呼ばれるようになりました。
具体的な診断基準は、以下の通りです。
- LDLコレステロール値≧140mg/dL(高LDLコレステロール血症)
- 中性脂肪≧150mg/dL(高トリグリセライド血症)
- HDLコレステロール値<40mg/dL(低HDLコレステロール血症)
脂質異常症も自覚症状は現れにくい
脂質異常症も発症して間もない頃は、ほぼ症状が現れることはありません。そのため多くの方は、健康診断などで行った血液検査の結果からコレステロール値などの数値の異常を指摘されて気づくケースが大半です。このような場合は、一度ご受診ください。
脂質異常症の怖い合併症
もともとコレステロールやトリグリセライド(エネルギーを蓄えるための貯蔵庫になる)は、人の体にとって欠かせないものですが、増えすぎてしまうと血管内にコレステロール等を蓄積させるようになって、やがて動脈硬化を引き起こします。
さらに放置が続けば、血管内が狭窄したり、蓄積物で詰まるようになります。これが心臓付近の血管で起きれば狭心症や心筋梗塞、脳付近の血管で起きると脳梗塞などの合併症を引き起こすようになります。
脂質異常症の原因
原因については過食・偏食(動物性脂肪、コレステロール、糖質の過剰摂取)、運動不足、喫煙・多量飲酒といった生活の乱れ、糖尿病などの基礎疾患、薬物の影響などです。
脂質異常症の治療について
治療に関しましては、まず生活習慣の改善(食事療法、運動療法)から開始します。
食事療法では、規則正しく栄養バランスのとれた食生活が中心となりますが、その内容は脂質異常症のタイプ(高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症)によって多少異なります。
高LDL(悪玉)コレステロール血症の患者様では、動物性脂肪を含む食品とコレステロールを多く含む食品を減らし、植物性脂肪を含む食品を増やします。高トリグリセライド血症の患者様では、糖質が過多となる食品やお酒は控え、摂取エネルギー(カロリー)を適正にしていきます。また低HDLコレステロール血症の患者様は、トランス脂肪酸を摂り過ぎないようにしてください。
運動療法は、どのタイプでも一緒です。無理をしない程度の有酸素運動を1日30分以上、できれば毎日実践します。また肥満の方は、適正なエネルギー量の摂取を心がけ、標準体重を目指すようにします。
これらの方法のみでは改善が困難と医師が判断すれば、併せて薬物療法も行います。処方されるお薬は、小腸でコレステロールが吸収されるのを抑える効果がある薬、肝臓でコレステロールが作られるのを抑える薬などです。これらは、主に動脈硬化が進行している場合に使用されることが多いです。
痛風(高尿酸血症)とは
痛風と名付けられた由来ですが、これは患部が風に当たるだけでも痛いという例えから生まれたと言われています。そもそも痛風は、血液中の尿酸が増えすぎている状態で高尿酸血症の発症が起因となって起きるものです。なお高尿酸血症は、血液検査によって血清尿酸値を調べた際にその数値が7.0mg/dLを超えている場合に、そのように診断されます。ちなみにこのような状態は、いつ痛風を発症してもおかしくありません。
なお高尿酸血症を発症している患者様は、脂質異常症、糖尿病、高血圧などの生活習慣病を併発していることが多く、尿酸値の高い状態を放置し続ければ、痛風の症状だけではなく、心疾患や腎障害、脳血管障害、尿路結石、痛風結節といった病気を併発することもあります。
尿酸とは
尿酸とは、細胞の核の成分であるプリン体が分解して発生する老廃物です。
多くは血液中に溶けて腎臓へ運ばれ、やがて尿として排出されるようになります。しかし、これが必要以上に増えてしまうと、もともと尿酸は水分に溶けにくい性質なこともあって血液中では尿酸塩として存在するようになります。さらにこれが増え続けるようになると、針状に結晶化した尿酸塩が続々と増え、これらが関節などに留まってしまうと激痛(なかでも足の親指の付け根)を伴うことがあります。
これが痛風です。痛風は高尿酸血症の患者様の1割程度の方にみられるとされ、病状がさらに進行すると関節が破壊されるようになります。
このように痛風や高尿酸血症の原因は、尿酸が増えることによるものなので、その元となるプリン体の摂り過ぎに注意します。なおプリン体には、レバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなど一部の魚介類に多く含まれるほか、アルコール飲料には、尿酸(値)を上昇させる作用があります。したがって、尿酸値が高いと指摘を受けたら、これらの飲食物は避けます。
高尿酸血症や痛風の治療について
尿酸値を下げることが治療の目的となります。
まず生活習慣の改善(食事療法、運動療法)から行います。食事療法ではプリン体を多く含む食品やアルコールを控え、野菜、海藻、きのこ類などを積極に摂る栄養バランスのとれた食事を心がけます。また運動療法では、無理のない程度の有酸素運動を1日30分程度毎日行うようにします。
このほかにも、水分をしっかりとって尿量を増やし、尿と一緒に尿酸を排泄していくようにしますが、尿量については1日2000mL以上を目安とします。
また生活習慣の改善だけでは尿酸値がなかなか下がらない、非常に高い尿酸値が認められるという場合、これらの治療法に併せて尿酸の生成を抑制する薬や尿酸の排泄を促す薬などを服用する薬物療法も行います。
